2006.03.30 Thu(00:15)
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昔とは見える景色が違うなあ。高石は、心のなかで呟いた。
京王線ほどではないが、昔はこの小田急線も民家に近い距離を走っていた。
線路沿いの小さな道の終わりやいくつもの踏切、それから戸建の庭に掲げてあった“高架反対”の横断幕が目についたものだ。
今は、その住民の反対をどういうわけか乗り越えて高架線となった部分が増え、駅舎も上空に新設されている。
車窓は、地上から距離のある空を流していく。
学生時代、高石は朝の名物ラッシュ(ダイヤが混み、急行なのに人の歩く速度より遅いスピードだったり、駅もないのに停車して待ったりした)で揉みくちゃになりながら通学した。今はフレックスなので、大概その帯を避けて出勤しているのでかなり楽だ。
痴漢に間違われないように手を挙げていたり、駅に着いたときにリュックが持っていかれないようにするのは大変だ。
当時その地獄の中でいいことがあったとすれば、立ったまま寝て行ける(若気の図々しさに愚かにも感謝した)ことと、ある人と乗り合わせたことくらいかもしれない。
ぎゅうぎゅう詰めのむさ苦しい車内で、彼女の周りだけはいつも爽やかな通勤風景に見えた。
たまにそばに流されていくこともあり(故意に寄ったのではない)、そんなとき、高石は長身と長い四肢を生かして彼女の空間を微妙に確保してあげていた。
一度だけ、「すみません」という声を聞いたような気がする。
圧死するかと思うほどの人の流れに負けそうになって、降りない駅で降ろされ乗り損ねそうになっていた。
あの時、捕まえてあげてよかった。
ずっと、捕まえて…。
見慣れた駅舎に滑り込み減速した車内で、現実に引き戻された。
高石は隣でつり革を掴みながらうとうとしていた妻のよろめきを助けつつ、網棚の荷物を下ろして一緒にホームに降り立った。
あの日捕まえた腕の感触を、今この時も感じながら。
・・・
[登場人物]
・高石:小田急線沿線に住む37歳サラリーマン男性。都内某大学卒。某IT関連企業勤務。妻はひとつ年上の松嶋菜々子似。
・・・
妄想で話を作り上げながら嫉妬する自分にうんざりします。
ちなみに、高石に焼き餅を妬く私は、脳内が女じゃないのかい。(笑)
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